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【書評】朝井リョウ「何者」を就活する前に読んで分かること

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朝井リョウ「何者」より


「就活する前にやった方がいいことってなんですか?」

 

そう聞かれたら、『何者』を読んだ僕はこう答える。

 

「何者にもなれない、ヘタクソな自分を受け入れることじゃないかな。弱さも全て。」

 

安西先生もそう言っている。

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漫画「スラムダンク」より

 

就活で必要なことは果たして何なのか?

 

朝井リョウの「何者」を読んで気づいたこと、映画を見て気づいたことを元に、就活に必要なことは何か書いていく。

 

※この先、ネタバレ注意※

 

 

 

『何者』を書く朝井リョウという存在

早稲田大学文化構想学部を卒業の27歳。小説家だ。

代表作には、2012年に映画化もされた「桐島、部活やめるってよ」がある。

今作『何者』は、平成生まれ初の直木賞をとったりと今後注目されている小説家の1人だ。

2015年までは兼業作家であったそうだ。

会社前と、会社後に小説を書いていく努力を重ねたらしい。

 

映画化した話題作『何者』 

本作品は映画化が10月15日に決定している。

超観察エンターテイメントとしてPRをしている。

 

キャストは豪華俳優陣で、

「佐藤健」

「有村架純」

「二階堂ふみ」

「菅田将輝」

「岡田将生」

「山田孝之」だ。 

 

そして、概要は以下の通りだ。

朝井リョウが今回挑んだのは、就職活動を通して自分が「何者」かを模索する5人の大学生たち。

 

お互いを励まし合いながらも、友情、恋愛、裏切りといった様々な感情が交錯していく彼らの青春の姿に、読者からは「リアルすぎるw」「就活中に読んだらマジ凹んだ」など様々な声が寄せられました。

 

映画化にあたり主人公の冷静分析系男子・拓人役には『バクマン。』『世界から猫が消えたなら』と立て続けに主演作が公開して、いま最も人気と実力を兼ね備えた俳優・佐藤 健。拓人のルームメイトで、何も考えていないようで着実に内定に近づいていく天真爛漫系男子・光太郎役に菅田将暉。

 

光太郎の元カノで、拓人がほのかな恋心を抱き続ける地道素直系女子・瑞月役に有村架純。偶然にも拓人の部屋の上に住んでいた意識高い系女子・理香役に二階堂ふみ。理香と同棲中で、就活とは距離を置いている空想クリエイター系男子・隆良役に岡田将生。拓人が所属していた演劇サークルの先輩で5人を冷静に観察している達観先輩系男子・サワ先輩役に山田孝之。

 

いま最もスケジュールが押さえにくい若手実力派俳優たちが集結して、就活でライバルとなる登場人物たちと同様に演技合戦を繰り広げます。

 

音楽にはPerfume、きゃりーぱみゅぱみゅなどを手掛ける音楽プロデューサー・中田ヤスタカ。今までのイメージとは一線を画した、キャストの心情の機微に寄り添うメロディーラインが映画全編にわたり緻密に展開されます。

 

そして主題歌では今話題沸騰中のアーティスト・米津玄師と初コラボ! 若者たちの葛藤や世代観を射抜く米津玄師による等身大の歌詞と、中田ヤスタカによるダイナミックなダンストラックが映画を盛り上げます。

 

果たして彼らは「内定」を取ることができるのか? そして「内定」を取れば「何者」かになれるのか? まだ誰も見たことのない超観察エンタメ、ここに解禁!

何者 - 映画・映像|東宝WEB SITEより

 

音楽で感情を揺さぶる『何者』の主題歌

映画『何者』の予告動画を見ると、吸い込まれそうな音楽世界がある。

音楽プロデューサーには、有名な中田ヤスタカが手がけている。

 

そしてイマ注目されている、

『アイネクライネ』がヒットした米津玄師が歌詞提供している。

歌詞の鋭さは現在の若者に刺さると話題となっている。

さらに、この映画には

「世界から猫が消えたなら」

「君の名は。」

「怒り」

「バクマン」

を企画プロデュースした、

川村元気が今作も関わっているので、面白くないはずがない。

「君の名は。」を見て、面白かった方は是非劇場に行くべきだ。

これは、僕も劇場に行かずにはいれない。

 

 

小説『何者』の全貌

『何者』のテーマ 

恋愛友情就活 

 となっている。

 

 軸となるは、『就活』だ。

 就活を通して、現代の若者にスポットライトを当てている。

特に、Twiterでの日常間は今の若者には共感できることが多々ある。

自分が丁度、今の就活生と同い年ということもあり、友達からの苦労話やよくある就活エピソードがまんま小説にも乗っていて、朝井リョウの想像力には度肝を抜かれた。

 

22歳という歳は、人生の大きな分岐点だと本作は教えてくれる。

そのターニングポイントで、

上記のようなテーマが錯乱し、

自分という存在を時に歪んでしまう。

 

そして、無理矢理でも前を向いて歩こうとする。

そんな表現や描写がこの本を読むとひしひしと伝わってくるのだ。

 

『就活』を通して、

自分の人生を、

自分という存在を、

考え始めて大人になっていくのだと。

 それが、生きるということだと。

 

『何者』に出てくる登場人物

核となるのは以下6名の人物だ。

僕の周りにも、ごく自然に存在しそうなキャラ設定なのだ。

 

大学サークルや、バイト、恋愛、どれも現役大学生の興味がある目線合わせがなされた話題感とリアルが印象的なメンツだ。

では、登場人物を紹介していく。

 

拓人

物語の主人公。劇団プラネットを銀次とやっていた。

脚本などを制作していた。

現在は、就活中。分析力には定評がある。

どこか現実に冷めた雰囲気がある。

光太郎と一緒に暮らしている。

瑞月のことが好き。

<とあるツイート>

面接終わって疲れて腹減らして家に帰ったら風呂行く途中の光太郎が全裸で歌ってた。食欲失せた。

※『何者』本文引用

 

 

光太郎

大学サークルのOVERMUSICの元ボーカル。そして、部長だった。

拓人と対照的に明るくテキトーな性格。

一緒に暮らすことを提案したのも光太郎からだった。

瑞月の元カレ。

就活中。

<とあるツイート>

面接官の人が超かわいかったから超見つめてたらその人も俺のことを見つめてた!

マジか!

ワンチャンあるか!って思ったら、俺のズボンのチャック全開!

そりゃ見るわな!

てか落ちたろコレ!

股間に音符マークついてるパンツだったし!

しかも十六分音符♫

※『何者』本文引用

 

 

瑞月

光太郎の元カノ。今も光太郎に恋心を抱いている。家庭の事情で悩むところがある。

お酒は飲めない。田舎出身。留学経験あり。家庭の事情で現実的な価値観が強くなっている。就活中。

<とあるツイート>

もう四月に入って一週間近く経つけど、まだまだ寒い。

いま気づいたけど、私、十月くらいからマフラーしちゃうから一年の半分くらいマフラーしてることになる。

※『何者』本文引用

 

 

銀次

拓人と一緒に劇団プラネットをやっていた。現在は。一人で「毒とビスケット」という劇団の座長。(月一の公演を実施している)舞台で食べていく為に必死に奮闘している。大学は中退。意識高い系というか自由人気味な性格。多くのことを発信しているが、それを拓人は良く思っていない。

 

<とあるツイート>

新たな企画始動中。

色んな分野の色んな人と打ち合わせを重ねる日々。

前は某人気番組の放送作家さんなんかにも打ち合わせ参加してもらっちゃったりして、ちゃくちゃくと進行中。毎日面白い人に会ってる。

最高のものができる予感。

※『何者』本文引用

 

隆良

理香の彼氏。クリエイティブなことが好きで、いわゆる意識高い系。アートや言葉を綴ることが好き。就活はしないと周りに宣言している。自分は周りの人間と違った視点や考え方ができると自分に酔っている。

 

<とあるツイート>

彼女のシューカツ仲間がウチにて会議中。

就活なんて想像もしてなかったから、ある意味、興味深い(笑)

そんな彼女たちを横目に、買ってきた本を読み進める。

※『何者』本文引用

 

理香

隆良の彼女。留学経験あり。外国語学部在籍。

意識高い就活生。名刺なども作ってガンガン就活中。

隆良と同棲中。

 

<とあるツイート>

今日もキャリアセンターでES見てもらってから面接の練習。

色んな人からアドバイスもらえて、ヤル気アップ!

このあとは瑞月たちと集まって就活会議。

仲間がいるって心強い!

※『何者』本文引用

 

サワ先輩

拓人のバイト先の先輩。大学院二年。

困ったときに拓人の良き相談相手となっている。

 

主なストーリーの流れ

光太郎のバンドサークルが卒業ライブをやることになった。

そのライブに、留学から帰ってきた瑞月も来ていた。 

拓人もそのライブに参加していた。

瑞月のスーツ姿を目にし、光太郎や拓人の就活意識が高まっていく。

ある時、拓人と光太郎のルームシェアしているマンションの一階上に、瑞月の知り合い理香が住んでいることが発覚。

しかも、同じく就活中の同期だった。

もう一人、一緒に住んでいる理香の彼氏の隆良もいた。

こうして、就活を通して五人のメンバーは結束していく。

かのように思えた。

 就活を通して、色んな感情の変化や人間関係の変化が彼らを成長させる。

 

人として誰が一番価値があるのか?

そして自分はいったい「何者」なのか?

いま、彼らの青春が終わり、人生が始まる。

http://nanimono-movie.com/story/ 引用

  

結末(ネタバレ注意)

拓人は就職浪人をしていた。

他の、メンバーも実は大学五年生だったのだ。

特に、拓人は自分がなぜ内定を貰えないか分からずに悶々としていた。

ある時、理香にTwiterの裏アカの存在を知られてしまった。

そこでは、拓人は「NANIMONO」というユーザー名で、

友達のことを見下したり、自分を崇拝していた。

もちろん、光太郎、銀次、理香、隆良のことも馬鹿にしていた。

NANIMON(拓人の裏アカ)

「それにしても、説明会とか一次面接とか、その辺りの話題で盛り上がるのが、すごく去年を思い出す。説明会で寝ちゃったとか、自分だけ私服だったとか、そんなあなたの精いっぱいの個性なんて誰の目にも溜まってないよと教えてあげたい。それに気が付く前なんだ、みんな。」

そこで、発信し続けることによって自分がいつか何者かに変われることを信じて。

自分が絶対的に正しいと信じて。

それを、理香にボロクソに指摘された。

 

理香:

『カッコ悪い姿のままあがくことができないあんたの本当の姿は、誰にだって伝わってるよ。そんな人、どの会社だって欲しいと思うわけないじゃん。』

 

その後の面接で拓人は、

 

面接官:あなたの短所と長所を教えてください。

拓人:「短所はカッコ悪いところです」

「長所は自分がカッコ悪いということを、認めることができたところです」

 

 

拓人は今の自分に真摯に向き合うことができ、

自分という存在が何者であるかを認めたところで物語は終わる。

 

 

この本を読んで気付かされたこと 

一番可哀想なのは観察者

拓人が、理香に詰め寄られるシーンがある。

そこで、理香は拓人にこう言う。

「心のどこかでみんなそう思っているんじゃないかな。観察者ぶっている拓人くんのこと、痛いって。」

「拓人くんは、みんな自分より不幸であってほしいって思ってる」

「私は拓人くんのこと笑ってはいない。かわいそうだとは思っているけど」

「誰かのことを観察して、ひそかに笑って、それで自分が別の次元にたっているなんて錯覚したりしない。絶対しない。あんたとは全然違う」

「あんたは、誰かを観察して分析することで、自分じゃない何者かになったつもりになっているんだよ。そんなの何の意味もないのに」

※小説『何者』本文引用

 

心にグサッときますね。

人の批判ばかりして、自分は行動すらしていない評論家タイプの人間いますよね。

「どうせ無理だろw」

「何かアイツこんなの始めたんだけどwウケルww」

「自分のこと意識高いって思ってるぜ、アイツ。。」

「世の中のことよく知らねぇ癖に、バカだよねー。」

「一生売れる訳無いじゃんw」

 

僕自身、こうしてブログで発信してから馬鹿にされたり、

噂で笑いのネタにされていますが、

僕なんかを叩くために時間を費やしてるなんて、

本当にかわいそうだなと思うんですよね。

結局、僕はそんな人の為に時間を1秒も使ってないのに。

僕を叩くために時間を使っていて人生もったいないなと。

(これ、キンコン西野さんも言ってたっけ?)

そんなことやっている時間あったら、

英単語の1つでも覚えたほうが自分の為になるのに。

 

たいして自分は行動できないくせに、

人のことを気にかけるどうしようもない観察者が

結局、一番人生損してるってことです。

 

強いということは弱い自分を認めること

 

理香が拓人に詰め寄ったとき、まるで自分に言われたかのようにグサッときた。

人は誰しも、認めたくない自分の短所がある。

それを、どう捉えて生きていくかが幸せの可能性を広げるのだと思う。

自分の短所を補う長所を延ばしたり、自分の短所を補う存在を見つけたりと。

 

つまり、

自分の弱さを認めることが人を強く成長させる

のだ。

 

強い(優れている)ということは決して、

有名な大学を出たとか、

年収が高いとか、

イケメンとか、

権力を持っているとか、

そういう強みではないのだということだ。

 

自分の弱さを認め、

明日に向かって歩いて生きることが強さなのだ。

 

 

それを、この本は如実に教えてくれる。

 

大切にすべきは自分を信じて生きること

 

人は誰しも、

「恥ずかしい」

「自分を傷つけたくない」

「周りから認められたい」

というような感情を抱いたことがある。

 

特に、

自分の環境が変わる時。 

 

そうなった時に必要なのは、

自分という存在がどこに向かい、何を為し遂げたいか

だと思う。

 

大人になればなるほど、挑戦できない言い訳が多くなる。 

というのも、歳をとっていくと人生のレールが変更できなくなっていく。

『死』という終着駅に誰しもが常に向かっている。

そこまでの通過駅で殆どの人が、人生の範囲が定められていく。

『就活』というのは、その範囲を広げる大きな駅であると僕は思う。

今なら好きな電車に乗って好きなところにいける。

ただ、片道切符なのだけど。

それを理解して、人生の方向性を見出すのだ。

この道を選んで良かったと思えるように。

 

先ほども述べたが、

途中で止まる駅(イベント)が、これからの人生を待ち受けている。

僕だけじゃなくて多くの人はこれらを考えるのだと思う。

 

・彼女と同棲するか独身で生きるか

・車を買うか買わないか

・結婚するかしないか

・子供を作るかどうか

・家を建てるか建てないのか

・親の介護をするのかしないのか

・癌になるかならないか

・老後はどうするか

・墓をどうするか

 

 これらイベントを通過して僕らの人生は進展していくのだ。

 これ以外にも突発的なイベントもあると思うが。

 

これから先、どうなるか誰にも分からない。

ただ、

自分を信じて、

今日をどう生きるのか

だけだ。

 

こうして文字を綴っている今、

始発で動き出した電車を僕は眺めている。

時間が立つごとに乗客は増え、人々の顔は暗かったり、本を読んだり、スマホをいじったり、子供をあやしている。。

ただの平日の朝かもしれないが、世の中が移ろいゆく流れを体感した。 

自分が生きている世界がこうして動いていることに何かアツいものを感じるのだ。

いつ死ぬか分からない自分の「生」に対してなのだと思う。

 

僕も拓人と同じ観察者なだけかもしれない。

でも、自分という存在を受け入れている。

弱さも全て。

 

堂々と生きる人間でありたい。

そして、それを声を大にして叫び続けていきたい。

   

↓本日紹介した本 

何者(新潮文庫)

何者(新潮文庫)

 

 

以上。

今日はこんなところで。 

 

−書き手−

キャリアコンサルタントのはるきち(@harukichi_macho)