「僕、今日で会社辞めます」
先日、後輩が会社を辞めた。
「この会社にいても、楽しくない」らしい。
まだ彼は20歳だ。
高卒で働いて2年、この会社で”働く意義”を見失ったのだろう。
「新天地でも達者でな。辛かったら戻ってこいよ」
そんな言葉を贈り、別れを告げた。
人それぞれ価値観は違う。
自分の意志で辞める彼を、引き留めはしなかった。
僕はこの会社の経営者ではない。
だが、彼が”楽しくない”と告げたことに、申し訳ないと思った。
仕事を楽しくないと感じていることに、僕は気づけなかった。
「次の職場も特に決まってないです。でも、営業やってみたいんです」と、不安そうに彼は語った。
きっと彼の見る世界は、いまの会社で働くことに一切の希望がなくなり、何かを変えたくて、勇気をふり絞り”退職”という決断をした。
別に”退職”は悪いことじゃない。
自分の信念が、退職することが最善と判断したならば、カッコいいじゃないか。
カッコいい判断は後悔しないと、この記事で説明した。
いまに始まった話じゃないが、若手社員が退職する問題は、何年経っても解決されない。
あのトヨタですら、若手社員の退職が問題視される。
そのことはこの記事に書いた。
そんな”会社を辞める問題”に、一石を投じたい。
彼はどうしたら、会社を辞めずに済んだのか。
人は見えている世界をどう受けとるかで、世界の見え方が変わる
「ピンチはチャンス」
そんな言葉がある。
見方を変えれば、”ピンチなような出来事もチャンスになる”という教えだ。
実にアツくて前向きな言葉だ。
僕が知っているテニスプレーヤーの彼は、ピンチという崖っぷちを愛している。
暑苦しいくらいに。
彼の言葉を引用するとこうだ。
人は、大ピンチの時ほど本気になり、自分の想像すら超える力を発揮できるようになる。
「崖っぷち」ほど、自分を成長させてくれるものはないんだ。
だから、僕はいつも意識的に小さな崖っぷちをつくっている。
時には、がけから落ちることもあるけれど、それでもいいんだ。
崖から落ちたら、心底悔しい。
その悔しさが、次の崖っぷちに挑む気持ちにつながるんだから。
流石に崖から落ちたらダメだろ〜。死んじゃうよ。
そして崖っぷちに大小あるんだね、修造さん。
さて、崖っぷちに立った際にそれをチャンスと思う人もいれば、ピンチと思う人もいる。
この差は何なのか?
同じ「崖っぷち」に立ち、見えている世界は同じなのに、受けとり方が違う。
たとえば、有名な話にコップ理論がある。
水が半分入っているコップがある。
そのコップを見て、「半分しかない」と考える人もいれば、「半分もある」と考える人がいるのだ。
両面思考になろう!プラス思考もマイナス思考も、人を動かす原動力 - NAVER まとめより引用
なぜ、”人は見えている世界をどう受けとるかで、世界の見え方が変わる”のか。
この謎を解き明かす必要があるようだ。
論理療法は悩みを解決し、世界の見え方を変える
”人は見えている世界をどう受けとるかで、世界の見え方が変わる”理由は、解釈の違いによるものだと考える。
心理学の世界では、「論理療法」と呼ばれるカウンセリング技法がある。
論理療法とは、1955年ごろにアメリカの臨床心理学者であるアルバート・エリスによって提唱された心理療法です。
基本的な理論は、人の悩みというものは、出来事そのものから生み出されるものではなく、出来事の受け取り方によるものだということ。
受け取り方を変えれば悩みはなくなるという解釈です。
わかりやすく言うと、出来事と結果との間に非論理的な固定観念や信念、思い込みによる解釈が入ることが、悪い結果を生み出すという考え方です。
論理療法は、出来事に対しての非論理的な解釈を、論理的な解釈に改善することで、生み出される結果を変える(良くする)というものなのです。
この療法は、”あるできごとの結果を自分の解釈で受け取る”のではなく、”合理的に解釈した結果を受け取る”ことで、多くの悩みは解決されるという。
たとえば、前述した彼は「仕事が楽しくないから会社をやめる」 という結果を選択した。
できごと:「仕事が楽しくない」
自分の解釈:「この会社にいる限り、仕事は楽しくない」
結果:「だから会社をやめるべきだ」
自分の解釈では、できごと→結果の間に「非合理的な信念」が存在する。
これは、主観的な感情である。
彼は”仕事が楽しくない”ことに対し、定かではない”この会社にいる限り、仕事は楽しくない”と悩み、”会社を辞める”という結果を”自分の解釈”で受けとった。
これを合理的に解釈するとこうなる。
できごと:「仕事が楽しくない」
合理的な解釈:「この会社では、仕事で成長できる機会が与えてもらえず、楽しくないと感じる」
結果:「だから会社をやめるべきだ。成長できる機会が欲しい。」
合理的な解釈は、できごと→結果の間に「合理的な信念」が存在する。
これは、客観的な事実に基づく解釈である。
もし彼が、”仕事が楽しくない”ことに対し、事実であろう”仕事で成長できる機会が与えてもらえず、楽しくない”ことに悩み、”成長できる機会が欲しい”という結果を受けとったとする。
このことを上司や先輩に相談し、成長できる機会を与えてもらい、会社を辞めることを踏みとどまったかもしれない。
会社を辞めずに済んだ可能性があった。
この話を概念体系でまとめると、こうなる。
「A:できごと」により引き起こされた心理的な問題は、そのできごとに対して、その人の「B:信念(感情)」が不適切な解釈をした「C:結果」といえる。
その解釈を修正し、正しい解釈ができるように導くことが、論理療法による治療的アプローチだそうだ。
これをまとめると、以下の図になる。
C =”非合理的な信念”を解釈した結果
C❜=”合理的な信念”を解釈した結果
ABC理論とは|論理療法(ABCDE理論) | カウンセラーWEB:心理学・カウンセリングの基礎知識より引用
ではなぜ、人は”非合理的な信念”を解釈し、結果に悩んでしまうのか。
人は非合理的な解釈をする生き物である
何とも悲しい知らせだが、人は基本的に”非合理的な解釈”をすることが多い生き物だ。
このことを、イラショナル・ビリーフ(非合理的な解釈)とよぶ。
※ちなみに合理的な解釈をラショナル・ビリーフと呼ぶ
イラショナル・ビリーフは、以下4つの特徴がある。
<イラショナル・ビリーフ4つの特徴>
①事実に基づいていない
②全く論理的ではない③気持ちを惨めにさせる
④否定的・悲観的な内容
イラショナル・ビリーフは、「~でなければならない」「~であってほしい」といった願望と事実が絡まっている。
これを論理的に否定し、感情と事実が絡まっているイラショナル・ビリーフを紐解くのが、論理療法なのだ。
そして、自分が抱えているイラショナル・ビリーフに対し、セルフチェックで解決に導く方法がある。
論理療法では、今考えていることを、自己チェックします。チェックするポイントは以下の4つ。
1.論理的か
2.柔軟か
3.現実的か
4.役に立つか
例えば「見積書の計算を間違えてしまった。自分は社会人として失格だ!」と、考えたとします。
1.論理的か
計算を間違えてしまっただけで、ビジネスマンとして失格とは論理的ではない。
2.柔軟か
1度の失敗で、自分自身の力量を判断してしまうのは、あまりにも硬い考え方。
3.現実的か
どんなに賢い人でも、失敗する。1度の間違えで自分自身を否定しまうのは、現実的とは言えない。
4.役に立つか
社会人失格と自己否定することで自身をなくし、成長を妨げるのは、自分にとっても周りの人間にとっても全くメリットがない。つまり、何の役に立たない。
客観的にチェックしていくと、考えていたことが非論理的であることが分かります。
そう考えることで「何をしてもダメな人間だ!」というような、自分の首を絞めるような思考から脱出できるのです。
マイナス思考になってしまった時は、4つのチェックポイントで、客観的に見直してみることが必要です。
ぜひ、自身の悩みの原因が分からなければ、イラショナル・ビリーフかどうかセルフチェックしてほしい。
イラショナル・ビリーフを解決すれば、見えてる世界の受けとり方が変わり、会社を辞めずに済むかもしれない。
まとめ
会社を辞めようか悩んだ時、ぜひ自分に問いかけてほしい。
会社を辞めるのはなぜか?
合理的な信念に基づくものか?
<今日のまとめ>
① 人は見えている世界をどう受けとるかで、世界の見え方が変わる
② ①は、解釈の違いによるもの
③ 論理的な解釈と非合理的な解釈が存在する
④ 非合理的な解釈は、論理的か・柔軟か・現実的か・役に立つかを考えれば、合理的な解釈に正すことができる
この結果、見えてる世界の受けとり方が変わり、会社を辞めずに済むかもしれない。
僕も20歳の時、「勉強がしたいから会社を辞めます」と上司に退職願を叩きつけたことがある。
幸いにも、優しい上司だった。
一緒になって、「じゃあ会社で勉強できる方法を考えよう」と協力してくれた。
どんな勉強がしたいのか、大学じゃなきゃできないことか、そもそも何のために勉強したいのか、一緒に考えてくれた。
「どうしても勉強したかったら、会社に勤めながら夜間大学に行けばいい」とまで言ってくれた。
悩んだ末、大学に行かなかった。
会社で働きながら勉強することにした。
理由は、僕はただ「会社じゃ勉強できない」と決めつけ、悩んでいるだけだった。
(イラショナル・ビリーフに悩まされていたのだ)
見えている世界の受け取り方を変えたら、僕の悩みは消えた。
「働きながら、この会社で勉強できる」と気づいた。
僕だけの話に限らない。
もしかしたら、見えてる世界の受けとり方を変えれば、会社を辞めずに済むかもしれない。
以上。
今日はこんなところで。
−書き手−
キャリアコンサルタントのはるきち(@harukichi_macho)
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