先日、旧友とリモート飲み会をして一番驚いたのは、社会に対して悲観したり仕事に対して諦めていることだった。
別に友達のことを否定するつもりはないのだけど。
気づけば、僕も大手企業に入社して8年のサラリーマン生活が経過した。
学生時代、僕の仲間たちは、みんな高い志を持ち、情熱に溢れていた。
働く理由を尋ねると、それぞれに熱っぽく語ってくれた。
商社を目指していた友人は「これからはビジネスで世の中をよくする時代だ。
世界の貧富の差をなくすようなビジネスを商社を通じて作りたい」と語った。
大手製薬会社に内定した友人は「薬の開発で日本の命をたくさん救えるような、日本を元気にする仕事をしたい」と胸を張った。
目をキラキラさせながら意気揚々と語る友人たちの姿に、僕はずいぶんと刺激を受けた。
それから数年が経った。
僕は高卒で自分なりに仕事という味を知りながら試行錯誤をして得てきた検証結果を、自分が挑戦してきた事実を、どうしても旧友に聞いてもらいたくて、リモート飲み会を開いた。
仲間たちと語り合い、これからの自分の人生についてヒントが欲しかったのだ。
飲み会が始まると、僕は学生時代の勢いそのままに、熱いトーンで仲間たちに語りかけた。
だが、社会人を数年経験した仲間たちから返ってきたのは、耳を疑いたくなるような言葉だった。
「おまえは相変わらず熱いなあ。でもさ、会社でそういう熱い話すると、浮いちゃうぜ」
「俺も会社に入りたての頃は、仕事で世の中を変えてやろうとか、そういう熱い感じでがんばったんだよね。でもさ、そういうのをわかってくれる人って会社には少ないし、そもそも、そういう雰囲気じゃないんだよね」
「働くことって、どうせそんなもんだぜ。まぁ、おまえも早くサラリーマンとして、そろそろ大人になれよ。」
友人たちはそんな言葉を次々と口にすると、話題は早々と金曜の合コンと週末のゴルフの話へと移っていった。
放置された矛盾に気づいた。
「会社の仕事を通じて、世の中をよくしたい」と多くの人が、就職のときには本気で語り、前向きな想いとともに社会人生活をスタートさせる。
そしてどの企業も「わが社は、志を持った熱い人材を待っている」と打ち出して、情熱のある優秀な人材を欲し、育てようとしている。
働く人の「仕事への情熱」は、企業にとっても、事業を推進していく上でのパワーの源だからだ。
にもかかわらず、その若者たちの持つ情熱という貴重な財産は、会社という組織の中で、たった数年で消えてしまっている。
若者は熱い情熱を持って会社に入る。
会社も、そんな若者たちを求めている。
なのになぜ、こんな矛盾が起こってしまっているのか。
そして、なぜ日本の社会は、この矛盾を「どうせそんなもの」とあきらめて、見て見ぬふりをして放置しているのか。
「大人」になった友人たちを目の当たりにして、怒りにも似た感情と憤りとが、僕の胸にこみ上げてきた。
いま僕の耳には、多くのサラリーマンからの「働くこと」に対する悲鳴が聞こえているような気がする。
「自分が今必死にやっている仕事は、はたして誰の役に立っているんだろう?」
「私は世の中に対してプラスの価値を生むことができているのか?」
自分の仕事が自分以外の誰のためになっているのかが見えない。
今の時代、こういう感覚は誰しもが持っているのではないだろうか。
組織や事業規模が大きくなり、一人ひとりの業務が細分化した結果、自分の仕事が誰にとって価値を生んでいるのか、見えにくくなってしまった。
多くの人たちが「働く意義」を見失って悩んでいることの背景には、目の前にある仕事と社会とのつながりが失われてしまったことがある。
僕は、「自分」と「仕事」と「社会」という3つが1本の線でつながっているような状態こそが、最も理想的な働き方だと考えている。
「自分」と「仕事」がつながっているというのは次のような状態を指す。
・自分がなぜ今の仕事をしているのか、納得できる答えを持てている
・企業名や肩書きに関係なく、自分の仕事に揺るぎない誇りを感じられている
・会社での仕事を、自分自身の持つ情熱や志と重ねながら、胸を張って説明できる
そして、「仕事」と「社会」がつながっている状態とは、こんなイメージだ。
・目の前の仕事が誰かの「ありがとう」につながっていることを具体的に想像できる
・今取り組んでいる仕事の成果が、自分の子どもや孫にも必ず役立つと思えている
この両方のつながりが実現できていて、「自分」「仕事」「社会」という3つの結び付きを働く人がしっかりと意識できている状態での働き方、そんな働き方のことを、僕は「志事(しごと)」だと考えているが、いかがだろうか?
参考になれば嬉しい。
共にがんばりましょう。
今日はこんなところで。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
−書き手−
キャリアコンサルタントのはるきち(@harukichi_macho)
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